日本人に「失敗するな」は無理?

私はかつて小学校で仕事をしていましたが、「失敗を恐れずにトライしてみよう」というのは日本の公教育の中ではかなり難しいものがあると思っています。

よく「失敗を恐れずにどんどんチャレンジしよう!」と声をかけているコーチを拝見しますが、気持ちは痛いほど解ります。

しかし
日本という島国で育っている民族であるということ
日本の学校って実際どんな感じなのか
みんなが集まると悪い習慣でもそれを強調してしまうこと
等が解っていないと、真にチャレンジ性のある選手は生まれにくいのではないかと思っています。

悲観的なことを書きますが、それでコーチ、選手、保護者のみなさんを失意の底に落とすだけが本記事の目的ではありません。

その原因を突き止めれば、その問題を解決し、チャレンジ性のある選手が生まれると私は思っています。

では一つ一つ考えていきたいと思います。

日本人という国民性(筆者考察)

周りに協調しようとする力が強い

日本人はとかく、周りに合わせがちです。
それも高学年になればなるほどそれが強まっていきます。

年齢が低ければ低いほど「自由にやっていいよ」と言うと本当に自由にやります。
こちらが提示したルールの範囲で色んなパターンを示します。
しかし、これは人間の発達上しょうがないことではありますが、
年齢を重ねるにしたがってその自由度は狭くなっていき、

過去に褒められた行動を増やし、
怒られた行動を無くそうとします。

たとえそれがサッカーのコーチに指導されたことでなくても、です。

つまり、学校ではだめだけど、サッカーではむしろ褒められる行動がどんどん失われていくことが非常に多いです。

これは人間が褒められる行動を強化することに起因しています。
(一部怒られたことに対して強化する例もありますが、それは別の記事でも書きます。)

なので、自由な発想が出にくい、本当の個性を生かしてサッカーと学校を使い分けて、どちらも生き生きする、ということができにくいのです。

周りを助けようとする人が多い

これはとても素晴らしい性質だと思います。

これはチームプレーには必須の性質で、11人の選手、あるいはベンチも含め、あるいはベンチにも入れないチームメイトも含めると数十人以上の人が1試合に関わってくる中で、

ピッチに出ている選手はまず、自分の役割を理解し、チームのために何が必要か考え、自分ができることで勝利に貢献しようとします。

ベンチの選手はピッチの選手と交代するときに、自分の能力を最大限発揮し、チームの勝利に貢献しようとします。ベンチ内でも、チーム内の雰囲気を作ったり、ベンチワークを手伝ったり、ベンチから声をかけたり、できることはたくさんありますね。

ベンチ外の選手も、練習中や、試合前などでチームの勝利のために周りの選手を助けることができます。

選手以外のスタッフも同様に、たくさんの人が1試合の中で様々な場面で助け合っていくことがチームとして勝つ上で必須の条件になります。

という感じで、周りの人を自分の持っている力で助けようとすることは必要不可欠な性質と言えるでしょう。これがある選手が非常に多い日本ではチーム力と言う点で様々なスポーツで輝かしい結果を残していることから明らかだと思います。

ただし、これにも注意点があり、「周りと合わせ過ぎるがあまり、自分より遅れている人がいると助けようとする」という様な気持ちであるとすると

後述しますが、「自分だけできているのは悪い」と思う端緒になってしまうので、とても注意が必要です。

これが進めば、自分だけ自由な発想で、周りと違うプレーをすることを無意識に避けることになりかねません。

この性質はチームプレーにおいて必要不可欠なものである反面、日本人にとっては成長を大きく阻害する

一人だけ飛び抜けるのは悪いと思いがち
(集団性バイアス)

日本の教育で育っていると、良くも悪くも突出することを嫌われます。

「調子に乗る」という言葉があるように、良いものを伸ばそうとすることはとても稀です。これは人間の恒常性などが働くことに因ることもあるのですが、周りの人間の力関係が変わることを人は嫌います。
なので、自分より下の人間が自分より上にいったり、その逆も嫌います。(内心喜んでいたとしても元の状況に戻そうとする力が無意識に働きがちです。)

ということからもわかるように、大きな夢や目標がない限り、自分の現在の立ち位置を死守してしまうのが人間です。

Jリーグは熱狂を呼ぶには生活から離れてしまっている。

欧州5大リーグの国では、地域に根ざしたチームがあり、国民にとってサッカーが生活の一部になっています。小学生でも、主婦でも誰でもサッカーの結果はある程度知っている、というようなイメージです。
人によっては二部リーグ三部リーグのチームを熱心に応援している人も稀ではありません。

その点日本ではサッカーと生活がまだイマイチ密着していない感じがするのは、歴史や風土の関係もあるので、一概に否定はできません。

しかし、欧州の子どもたちは国民が熱狂しているプロサッカーに憧れを抱くからこそ、大きな成長するための力を持ちます。

日本に住む子どもたちはJリーグでは少しゴール設定としては弱い(生活から離れていて、強い向上心を持ち辛いので)欧州5大リーグのチームを目指していかなければならないと私は思います。

学校とはどんなところか

次に学校とはどんなところであるか、とうことを分析していきたいと思います。

失敗は予防され、徹底的に改善させられる。

学校では失敗を恐る教育をされると思います。
リスクを最大限回避する行動が推奨されます。

例えば「私は絵描きとして生きていくので勉強は一切しません」という子がいたとします。
当然ですが学校はそれを許しません
何故なら絵描きになれなかった場合潰しがきかないと考えるからです。

まあ親心としても当たり前と言えば当たり前ですが。

ほとんどの先生は大学を卒業して、企業に務めることを推奨します。
つまり、それなりの学を身につけることを推奨します。よって学校の勉強をそれなりの点数取れることを推奨します。何故なら学校の通知表とはほとんど学力によって決まるからです。

よく「学校の先生は数字に責任を持っていない」と会社人から批判を受けますが、私も小学校の教諭として働いていましたが、実は学校の先生は「学力テスト」という数字に追われています。その他にもアンケートがなされており、強化に対する興味が下がったりするとだいたい研究会で突かれます。

なので、教員も躍起になって学力をあげることに注力します。

そうすると、前述した様な夢は、鋼の意志がない限り教員に尻を叩かれて断念せざるをえません。
実際にそれ以外の道に進んだことがある人が少ないため、起業して会社を経営するとか、アーティストとして生きていく、といった少し変わった仕事のことは何も知らなく、できないというバイアスがかかっているためです。

周りから突出しすぎると足並みを揃えさせられる。

突出を嫌われるのも学校現場の実情です。例えば、漢字ドリルや計算ドリルが4月に配られますが、1日でそれらを終わらせてはいけません。

きっと1日で終わらせてもまた宿題で出された時には同じ場所はしなければいけないなどの措置が取られると思います。

もっと先に進みたい子は塾にいくことを薦められるなど、学校内ではその子に対する特別な措置は講じられない場合がほとんどだと思います。

つまり、遅れすぎてもダメ、早すぎてもダメ。

もちろん遅れている場合には、ペナルティーや居残りなどの策が講じられます。

つまり早すぎても対応できない、遅すぎたら尻を叩かれて、あくまでも並のスピードで進むことを求められます。

これで自分だけ、やりたいことをやる?
周りに反して違う行動をチャレンジする?

ということが無意識にいかに抑制がかかっているかなんとなくわかっていただけたかと思います。

では、もうだめじゃんうちの子。となってほしいわけではなく
本当に現状は厳しいものがある、頑張りたくても環境的に頑張れない子(親や教師)もいるという現状を踏まえて、その現状を打破する方法を考えていきます。

解決策その1
「学校とサッカーを分けて考える」

これが最高の方法だと私は思っています。

学校の先生に言われたことは学校内のルール、
サッカーのコーチに言われたことはサッカークラブでのルール。

ということを何度も教えてあげることです。
人間は一度や二度言ったぐらいでは理解できる様な生き物ではありません。
何度も何度も丁寧に教えてあげることで、言われた内容が体にしみ込んでいきます。

なので、できる限り学校とサッカーとで違うことは何度も場所によってルールが変わることは教えていきましょう。

何を褒めて、何を無視するか

コーチングや教育ではこの「何を褒めて(強化して)、何を無視する(消去する)」かが重要になってきます。

前述したように、我々は褒められた行動を増やし、無視された行動を減らす生物であります。(怒るのは実は逆効果)

褒める=その行動に価値がある。ということです。
つまり、どの様な行動に価値を置くのかということをコーチングの中から選手に伝えます。

なので、コーチングによってしっかりとサッカーのプレーと学校での行動を変えることを要求することができ、それが定着してくると、学校での行動様式とサッカーでの行動様式の二つの軸を持つことができる様になります。

これはその場に合わせた行動をするということにも応用ができますので、移動中の電車の中や、試合と試合の待ち時間等、他の場面でも応用できます。

解決策その2
「低年齢で突出している国内外の選手を紹介する」

同世代でどれだけできるか、ということを解らせるためには動画が一番です。
「ほら、8歳でもここまでできるんだよ。みんなと同じ人間だから、毎日ボールを触っていればここまで上手くなることも夢じゃない。本当にできるんだよ」と私はいつも言い聞かせています。

では、一人だけ選手の紹介をしておくと、最近有名なのはムココという選手です。14歳ながらドルトムントのユースで得点王などにもなっている選手です。

この動画ではだいぶ完成している様ですがこれで14歳。中学2年生と考えればどれだけスーパーな選手であるか、想像に難くないかと思います。

また、他にもすごい小学生たちはたくさんいます。少し面白い動画もみつけたので、こういうのも見せるとすごいいい刺激になるかと思います。

解決策その3
「大きな夢を持たせ、現状のぬるま湯を突き破らせる」

長々と書きましたが、動画を見せて、サッカーと学校での行動様式をしっかり差別化することを教えて、最後には大きな夢を持たせます。

そうすることで、無限の向上心を生むことができます。

そうすれば長々とした練習も必要ではなくなり、チームでの練習は1時間半に収めて、後は自分たちで好きにボールを触るようになっていきます。

コーチに言われてボールを強制的に触る人と、自分でボールをこんな風に動かしたい!と思って触る人で、どちらの方が上手くなるかは分かるかと思います。

大切なことは向上心を抱かせ、そのゴールを映像によって明確にし、ルールの中でそれを達成することです。

それができれば日本人でも失敗を恐れずにチャレンジし続け、やがては夢を叶えることができるでしょう。

少年たちよ、失敗を恐れるな。

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